【Nichecraftからメンバー脱退のお知らせ】

Nichecraftのメンバーから金藤みなみが脱退します。


Nichecraftに3年と10ヶ月いて、演劇にせよアートにせよ、それまでは“良い作品を作りたい”だったのが、“良い作品は現れるので、その環境を整えていきたい”という気持ちに変化していきました。
環境や、面白いなって思うものをコレクションしていくと、いい作品は自然と現れてくれるなというのをしみじみ思っています。
ただいい作品がぽんとあるんじゃなくて、やっぱりいろんなものとつながって存在しているんだなと。当たり前ですが。
ニッチクラフトもそうで、まさか繋がるものじゃないものが、自然とつながった案件が数え切れないほどあって、本当に素敵なシーンに何度も立ち会ってきました。
演劇とアートが道場でいっきに見れたり、小道具発想の大道具をやったり、展示をやったり、製本に関わったり。
孤立しがちな自分を、美術の現場につなげてくれたこともあります。
それで、まあ4年やって今、再度、小道具の仕事はやめて、美術という形での発表をしっかりやっていきたいということをNichecraftのふたりに伝えました。すでに小道具は全然やっていないというのもあります。
私事ですが、Nichecraftのみんなで集まった時のあのふわんとした雰囲気が好きだったので、今後も沢山の皆様に愛されるNichecraftであるように、今後は一ファンとして、応援していけたらなと思います。
今後もどうぞよろしくお願いします。

金藤みなみ



2011年から3年間Nichecraftで活動をともにした金藤みなみが、脱退します。
それはNichecraftが金藤みなみ加入前の状態に戻る、という意味ではありません。なぜなら金藤みなみ不在のままで今のNichecraftはなかったから。
団体も個人も、時間が経てば変化していきます。初志貫徹のように変わらないのも大切ですが、本当にまるっきり何ひとつ変化しないとしたら、それは生きてる(活きてる)とはいえないでしょう。機械の部品ではなく生身の人間として活動している僕らにとっては、あらゆる変化は巻き戻せない変化です。だから、変化しようとしているメンバーを引き留めておく権限は僕にはありません。互いにとってここが良きターニングポイントだったねと数年後に言いあえたら最高だと思います。
そして金藤さんがくれた変化は、Nichecraftという団体にできる事の可能性を何倍にも広げてくれました。製本ワークショップで、紙上対談で、(そしておそらく僕自身も意識していないところで)なにか面白そうなこと思いつくたびに「ただの小道具さんじゃないことをやりたい」と「小道具さんなのにこんな事していいのかな」の間で揺れ動く背中を何度も押してくれました。その行動力と決断力は、今後もしっかり受け継いでいくつもりです。

大事なことをもう一つ。
Nichecraftでの活動が終わりだというだけで、金藤みなみの活動は続きます。そりゃあもう、CMのあともまだまだ続きます。
Nichecraftにいるかいないかってのは突き詰めればごはん派かパン派か程度の違いで、彼女はパンを選んだ、それだけのことです。そして僕らも時々はパンを食べたくなるはずで、その時にはきっと「金藤さん、おいしいパン知らない?」と尋ねに行くし、ごはんがふっくら会心の炊き上がりをみせたときには一口でいいから食べてみなよって呼ぶこともあるでしょう。
だんだん何をたとえたいのか分からなくなってきたけれど、この3年間でNichecraftを知ってくれた人・関わってくれた人たちには、これからは新たな選択肢としてごはんもパンもお腹いっぱい食べて欲しいな、って、思うのです。
あの子のイースト菌はすげえんだぜ。

2014年10月 Nichecraft代表 辻本直樹